【ILC 2016 in Japan】セッション1:米国新政権の政策と日米関係の展望

挑戦を受ける民主主義のガバナンス


セッション1では「米国新政権の政策と日米同盟の展望」をテーマに行われ、米紙「ワシントン・タイムズ」のコラムニスト、ビル・ガーツ氏が基調講演を行いました。

米大統領選の直後であるだけでなく、ドナルド・トランプ氏の勝利という予想外の結果に終わったことを受け、同セッションは国内外専門家、有識者らの関心を集め、会場は満席となる約250人が詰めかけました。

講演に先立ち、モデレーターを務めた、国際開発や平和構築論を専門とする元教授は、現代の世界情勢の変化について概観を述べました。その変化として、①アメリカの関心事がロシアから中国に移行②文明間の衝突によりテロ戦争の頻発③100カ国以上が植民地支配から独立——の3点を挙げ、「このような激動の時代に、今回の大統領選挙の結果はトリガー(引き金)になる。日本の選択は根本から問い直されるだろう」と分析しました。

ガーツ氏は講演の中で、大統領選を振り返りながら、トランプ氏の勝利について、「(ビル・)クリントン政権の国防スキャンダルが中国の軍事力の増強を招き、現在の安全保障に影響を与えている」と指摘。「米国人の多くは、現在が困難な時であると考えており、彼らもトランプに投票したというよりも、オバマ大統領やクリントン候補への反対票を投じたという印象を持っている」と語りました。

また、ガーツ氏はトランプ次期大統領の政策について、「トランプ氏の選挙運動中の発言と実際の政策は分けて考える必要がある。私の経験では、政権は大きなタンカーのようなもので、政策を転換させようとしても簡単にはできないものだからだ」と説明。日本に関する見解の一部を修正していることを例に挙げながら、「慎重に見極めていく必要がある」と述べました。

トランプ氏の政治思想についてガーツ氏は、共産主義と闘っていたレーガン政権下の政治システムや、当時の米国の生活スタイルに誇りを持っていると説明。対中国について、「米国はこれまで、中国と貿易を続けていけば中国の共産主義システムに変化がもたらされ、平和的に脅威をもたらさない国に生まれ変わるだろうという発想でやってきたが、実際にはそれが機能していないというのがトランプ氏の立場である」と分析しました。

その上で、「中国は米国にとって重要な貿易相手国だが、米国の原則や信念を曲げることはない」「トランプ氏は軍事力の拡大には寛容で、強さを通して平和を築こうとしている」と述べました。また、ソーシャルメディアを活用して行われたトランプ陣営の選挙キャンペーンについては、今後、政治学者らの研究の対象となるような方法だったと評価しました。

コメンテーターとして登壇した米シンクタンクの元研究員は、日本には米国の変化が正確に伝わっていないとした上で、「冷戦時代、ポスト冷戦時代には、米国の国土が狙われる危険性はなかったが、9.11以降、米国は国土を狙われる危険性のある国になった。国土が狙われる以上、『アメリカ第一』の予算配分をしてくると思われる」と分析。「これまで米国はTPPを安全保障の観点で見てきたが、トランプ氏は国内問題として捉えている」と指摘し、共和党の変化に注視する必要性について語りました。

また、カナダ元国務長官のデビット・キルガー氏は、中国の脅威を訴えながら、「民主主義の統治機構が挑戦を受けている。平和の力によって世界が統治されることを期待する」とコメントしました。

UPF国際会議レポート